2016年9月10日土曜日

みなさんは「正しい申告」をしていますか?1回目(全2回)

みなさん、こんにちは。

今回は、みなさんが税理士にお願いする「申告」について、税理士の視点からお話ししたいと思います。

なぜ、申告のお話しをするかと言いますと、実は申告には「正しい申告」というものが存在するからです。
では、正しい申告とはどういったものなのか説明していきます。

正しい申告とは、「正しいお金の流れを把握しているか」という意味になります。
例えば、ある車の修理屋さんA社とB社があったとします。

A社では、修理に使う部品の原価管理、従業員の人件費、修理部品の管理を正確に行っているため、修理の依頼がきた場合の見積もりをほぼ正確に出すことができる会社です。
一方B社は、A社ほどの正確な管理を行っていないため、見積もりが「どんぶり勘定」になっている会社です。

この二つの会社がそれぞれ仕事をしていった場合、
結果として、B社では目標の売上が達成できたとしても、その売上に見合う利益を得られていないということが起きてしまう場合があるのです。

だからこそ、会社のお金の流れを把握して、正しい申告をするようにすればB社のような事態を避けることができるのです。
みなさんも、正しい申告をするようにしましょう。

今回は「正しい申告」について説明しましたが、これはあくまでも私(税理士)の視点になります。
次回は、企業が申告に対してどのように考えているのかを説明することで、2つの視点から申告とはどういったものなのか説明したいと思います。

それでは次回まで、ごきげんよう。

2016年7月17日日曜日

”無料”相談の意味


みなさん、こんにちは。

最近は税理士による無料相談が当たり前になってきました。
かなり多くの事務所でも無料相談をしてくれますが、みなさんは”無料”相談について少し考えたことはありますか?
無料と名の付くサービスというのはみなさんからすればとても便利なものだと思います。
ですが、改めて無料の意味を知らないと大きな失敗することもあるのです。

今回は私なりの”無料”相談の意味をお伝えしたいと思います。
結論から言いますと、”無料”相談では具体的な事を決めることができない可能性が高いです。

なぜかと言いますと、無料相談の多くは時間を掛けることができないからです。
無料相談の時間は基本的に30分や1時間程度だと思います。
この時間で、相談に対しての決断を出すことが難しいですし、決断を出した後のことに責任を取ることができないためです。

大手になってくると、無料相談の相手が専門家の人ではない可能性もあるため、よりその傾向があると思います。

実際に当事務所へ相談に来たAさんも無料相談を何度も利用されていた方でした。
Aさんはとある電気工事の仕事を引き受けるためには、許可が必要とのことで、何とかして許可が取れないかと無料相談に何度も足を運んでいました。

しかし、どこに行っても条件が揃わないため許可を取得するのは難しいと言われていました。

A:許可を取りたいんですけど、どうしても条件が一つクリアできないんです・・・
今来ている仕事は断るしかないのでしょうか?
私:内容を聴いていますと、ストレートとはいきませんが、許可が頂けると思いますよ
A:本当ですか!?3か所に相談しに行きました、全部無理だと言われました・・・
私:顧問税理士がいると思いますが、顧問税理士には相談しなかったのですか?
A:安くしたかったので、電話でも相談や質問ができない契約なんです・・・
私:だから、無料相談に行かれていたんですね・・・
  状況から考えますと、許可が通ると思いますので、こちらで提携している行政書士にお願いしておきますね
A:(半信半疑気味に)お願いします・・・

結果的には、Aさんは許可を取ることができました。
なぜ無料相談では取れないと言われていたかというと、Aさんの状況を十分に確認して判断するだけの時間が取れなかったためでした。

また無料相談では基本的に一般的な例の話をすることはできても、より具体的な相談になってくると本当に大丈夫なのかどうかすぐに判断するのが難しくなります。

Aさんの場合は、一般的に許可を取得する条件とは異なっていたため、無料相談では対応ができなかったと考えられます。

無料相談は大変便利なサービスですが、無料相談では解決できないものもあります。
みなさんも無料相談に行く場合は、無料相談を過信し過ぎないようにしてください。


それでは次回まで、ごきげんよう。

2016年6月12日日曜日

土地を売るときには、詳しい人と一緒にやらないと大損する!?(2/2回目)

みなさん、こんにちは。

土地の相続が発生した際に、以下の2つが重要であることを前回お伝えしました。
 1:土地を高く買ってもらう人を見つけること
 2:土地に関わる税金を安くすること

前回は土地の相続が必要になった友人(Aさん)の実例を元に、「土地を高く買ってもらう人を見つけること」に焦点を当てて説明しました。

今回は「土地に関わる税金を安くすること」について説明します。
いくら土地を高く買ってくれる人が見つかっても、税金が高くなってしまったら残るお金が少なくなってしまいます。
そこで、Aさんの実例を元に今回は「税金を安くする」観点で説明していきます。

Aさんの例は相続した土地の中には農地が含まれていました。
その農地の一部を残して、残りを売却するというお話しでした。

話を簡単にするために、Aさんは下の図のオレンジ色の農地部分を売却したものとします。

この時、譲渡所得税というものが発生します。
(土地を売る際に発生する税金のことです)
通常、相続の場合は土地の保有年数が5年を超えているため、譲渡所得税は「土地の売却価格 土地の購入価格」の20になります。
Aさんの場合は、土地の購入価格が450万円だったので、「9000万円 450万円」の20%で1710万円の税金が掛かるはずです。

しかし、Aさんの場合は以下の二つの条件が適用できたため、譲渡所得税を安くすることができました。

※注意:ここから計算を行うので、混乱しないように!
条件1:相続で譲り受けた土地である
相続で譲り受けた土地の売却では、相続税で掛かった分を引くことができます。
Aさんの場合は売った土地に対応する相続税が3000万円だったため、譲渡所得税は以下のように変化します。
9000万円 450万円 3000万円) 5550万円
この5550万円に対しての20%になるので、譲渡所得税は1110万円に減らすことができます。

条件2:都市計画29条に該当
Aさんの場合、売却しようとした土地で都市計画29条に該当する土地でした。
(都市計画29条に関しては、説明を省略します。ここでは、そのような条件があるものと認識していただければ大丈夫です)
この場合、譲渡所得税の計算式が変化してきます。
5550万円の内、2000万円分は14%で計算し、残りを20%で計算するようになります。
2000万円 × 0.14 3550万円 × 0.2 990万円

よって、Aさんの場合は、最終的な譲渡所得税は990万円になりました。
上記の条件を適用する前の税金と比較すると半分ほど下がっていることがわかります。

このように、土地を売る場合でも詳しい人がいるだけで、税金を安くすることができます。
みなさんも、土地を売る際には詳しい人と一緒に行うようにしましょう。

それでは、次回までごきげんよう

参考文献

2016年5月8日日曜日

土地を売るときには、詳しい人と一緒にやらないと大損する!?(1/2回目)

みなさん、こんにちは。

前回は相続をする場合、必ず税理士と一緒に現場を見る必要性を説明しました。
意外なことから、思わぬ節税に繋がることがありますので、それに気が付くには税理士に現場を見てもらうことが一番の近道です。

今回も、相続にまつわる内容をお話ししようと思います。
相続と聞いたら、土地の相続を思い浮かべる人も多いと思います。
相続で土地を受け取ることになったが、自分では管理できなくなった土地を売る人も少なくありません。

この時に重要なことは、以下の2つです。
 1:土地を高く買ってもらう人を見つけること
 2:土地に関わる税金を安くすること

そこで、上記の内容について、2回に分けて説明しようと思います。
今回は「土地を高く買ってもらう人を見つけること」に焦点を合わせてお話ししようと思います。

これは、私の知人であるAさんの父親が亡くなり、土地を相続した時の実例です。
相続した土地は「宅地」と「農地」があり、農地の一部を売ろうとしていました。

まず、最初に私が行ったことは、
「土地を売る前に実測し、測量士に宅地開発を行う場合の図面を書いてもらう」ことでした。
これを事前に用意しておくことで、2つの利点があります。
1:宅地開発の図面上でAさんが残したい土地の場所を正確に知ることができる
Aさんが残したい土地を正確に伝えられるため、相談がスムーズに進む
2:不動産会社が提示してくる図面と比較することができる
⇒不動産会社が正確な見積もりを行っているかが判断できる

次に、私が行ったことは、
「全国展開している不動産会社と地元の不動産会社の両方に見積もりしてもらう」ことでした。
地元不動産はその土地の環境や状況に詳しいので、その土地の価値を正確に分かっています。
全国展開している不動産にも頼んだ理由は、地元の不動産の人が正確な情報を教えてくれるとは限らないので、金額の比較対象とするためです。
こういった比較をすることで値段を高く、納得して土地を売ることができます。

Aさんの場合は2つの不動産会社に話を持ち掛けたところ、最終的には全国と地元の不動産を合わせて5社の会社が名乗りを上げていました。
その5社の買値を比較したところ、一番高いところと一番低いところで2500万円もの差額が発生していたのです

最終的には、一番高く買い取ってくれる会社にAさんも納得して土地を売ることができました。

このように、事前に測量士と一緒に比較用の図面を用意することや、複数の不動産会社に依頼することで納得のいく土地の売ることができます。

次回は、土地を売るときに重要な「土地に関わる税金を安くすること」について説明します。


それでは、次回までごきげんよう

2016年4月16日土曜日

相続のときは税理士と一緒に現場を見ること!


みなさん、こんにちは。
4月に入り、確定申告という一番忙しい時期が終わりました。
毎年、様々なお客様から依頼を頂き、仕事させていただけることに感謝しています。
その感謝の気持ちを込めて、少しでもみなさんの役に立つ情報を、これからも発信していきたいと思います。

今回は「相続」に関するお話しをしようと思います。
「相続」というのは、必ずどこかで一度は経験するものです。
ただ、未だに経験したことが無い人にとっては「相続って何すればいいの?」という疑問で一杯だと思います。
また、平成2711日から基礎控除が下がりました
これは簡単に言うと、今まで相続税の対象にならなかった人たちも対象になることを意味しています。
そのため、相続に関する関心が高まっています。

そこで、相続についてまず言えることは「税理士に相談してください!」ということです。
なぜなら、相続については税金だけでなく、相続争いと言った人間関係も密接にかかわってくるからです。
相続の際には、税理士と一緒に進めることで税金を安くするだけでなく、相続争いの被害を最小限にする効果も見込めるからです。

ただ、相続において税理士の中には、お客様が持ってきた書類のみを確認して進める人もいます。
しかし、実は相続の現場を税理士と一緒に確認することで、「書類からでは見えないポイント」に税理士が気付き、思わぬ節税に繋がることがあります。

以下のお話は、実際に当事務所で起きた事例で、お客様のAさんが相続について相談しに来たことから始まりました。

【実例】
A :私の父が亡くなり相続が発生したので、相談しに来ました。
私:相続についてのご相談ですね。どのような内容になりますでしょうか?
A :相続人全員にこれからどのような相続の手続きが行われるのか説明してほしいのですが・・・
私:分かりました。それでは説明を行う日程を決めてお伺いします。

説明会当日、現場へ着いた時にAさんの父の家の斜め前に大きなマンションが建っていることに気が付きました。
私:ちょっと気になったのですが、大きなマンションが建っているんですね・・・
A :はい、このマンションが建った時に、父がお金を貰ったことを覚えています。

ここで、知っている人は気が付いたかもしれませんが、実はこの時点で節税の可能性が生まれていたのです。その要因は「日照権」にあります。

Aさんの父は、マンションが建つ際にお金を貰っていました。そのお金は「日陰補償」と言われる補償金です。
要するに、マンションが建ったことで、日が当たらなくなるため、その補償としてお金を貰っていました。

実は、この事実が節税において重要な意味を持ってきます。
相続において、節税のポイントとなるのは「その土地の価値」が重要になってきます。
簡単に説明すると、土地の価値が低ければ低いほど、相続税を安くすることができます。
今回の例では、マンションが建ったことで「日陰補償」を貰っていました。
それはつまり、マンションが建ったことで土地の価値が低くなったことを意味しています。(日当たりが良い土地の方が価値が高いということです)

A :そうだったのですか!?まさかこんな話が節税に繋がるとは・・・
私:はい、何が節税に繋がるのかは見てみないと分からないので、他にも何か資料があれば持ってきてください。
A:分かりました!確認してみます!

今回のように、税理士が現場を見たことで思わぬ節税に繋がることはよくあります。
そのため、みなさんも相続が発生した際には、ぜひ税理士と一緒に現場を確認するようにしてください。
現地を見てこそ本当の評価ができ、みなさんが余分な税金を払わないようにするためです。

それではみなさん、次回の記事までごきげんよう。

当事務所を気になった方は以下のリンクからHPへアクセスできます。


2016年3月13日日曜日

ご用心!「無料申告の落とし穴」

みなさん、こんにちは。

3月は確定申告もあり、当事務所も1年で1番忙しい時期なります。
大変ではありますが、その分仕事が終わった後の達成感はとても大きいので、今年もお客様のために一生懸命頑張っていきます!

さて、確定申告をする際に良く耳にするのが「無料申告」という言葉になります。
ネット上でも確定申告を税理士に頼まず、個人で調べて申告をされる方もいると思います。

そこで、今回のテーマは「無料申告の落とし穴」を説明しようと思います。
以下の話は、実際にあった相談内容を元に、説明をできる限り分かりやすくしたものになります。

【相談事例】
ある個人事業主(Aさん)は昨年家を購入したので、その税金対策の相談に来ました。

A :昨年、5000万円で家を購入しまして、今は住宅ローン控除を申請しています。ただ、他に何か方法はないかと思って相談に来ました。
石:そうですか。それでは銀行からの借入金は5000万円でしょうか?
  あとその家は自宅ですか?
A :借入金は5000万になります。
  あと、家は自宅だけでなく仕事場としても兼ねています。
石:分かりました。その他に住宅購入の諸経費や住宅ローンの利息はいくらぐらいになりますか?
A :諸経費は150万円掛かりました。初年度の利息は60万円ですね。
石:なるほど・・・(沈黙)
A :あの・・・何かあるのでしょうか・・・
石:ええ、実際に試算してみないと分からないのですが、もしかしたら住宅ローン控除を適用する前に、もう一つの方法を行うと税金が安くなるかもしれません

今回の場合「自宅と仕事場を兼ねている家」という部分がポイントになります。
では、実際に試算の方法を説明します。
【前提条件】
5000万円の家の内訳は、土地が3000万円、建物が2000万円である
Aさんの所得税が税率20%である

【方法1:住宅ローン控除のみを適用】
 今回Aさんが相談に来る前に、申請していた制度になります。
 この「住宅ローン控除」とは、家の購入金額もしくは銀行から借りた借入金の、どちらか安い方の金額に対して1%を控除してくれる制度になります。
 今回の場合、家の購入金額は5000万で借入金も5000万円で同額になります。
 また、「住宅ローン控除」には限度額が設定されており、現時点では一般住宅に当たる物件は、4000万円までが限度額となっています。
(詳細を知りたい人は、この記事の一番下に記載する参考文献のURLをクリック)
 今回の場合、5000万円の家ですが、住宅ローン控除の限度額は4000万円のため、4000万円の1%である40万円分の税金が安くなる計算になりました。

【方法2:事業経費も適用する場合】
 Aさんが建てた家は「自宅と仕事場を兼ねている」ことになります。今回の場合1/3を仕事場としていた場合を考えます。
Aさんの話では、住宅購入の諸経費が150万円掛かり、住宅ローンの利息は60万円掛かっていると言っていました。
2つの合計金額は210万円ですが、この家は1/3は仕事場を兼ねている家になります。その場合、210万円の1/3は「事業経費」として計上することができます。
(家の1/3は仕事場のため、家に掛かるお金の1/3は事業に掛かるお金と解釈できるため)
そのため、2101/3である70万円は経費となります。
 また、建物の減価償却費(建物の値段 ÷ 24ヵ月)として以下の金額も経費にすることができます。
減価償却費 = 2000 ÷ 24 × 1/3(仕事場の割合) = 27.7777・・・ = 27
つまり、合計で97万円が経費として計上することができます。
そのため、上記の経費の内、所得税と住民税(10%固定)と事業税(5%固定)の足した割合、
97万円 × 0.35(%)  339,500円分の税金が安くなります。
 さらに、5000万円の2/3は自宅なので「住宅ローン控除」を適用することができます。5000万円の2/3である3333万円を住宅ローン控除に適用すると、33万円分の税金が安くなります。
 最終的には、339,500円と33万円を足して、合計で669,500円分の税金が安くなる計算になりました。

A :え?20万円以上も税金を安くすることができるんですか!?
石:試算したら、そのような結果になりましたね・・・
A :直ぐに、住宅ローン控除を取り消して、必要な書類を持ってきます!

上記の相談例は、説明用に簡略化していますが、実際にあったことです。
もし、Aさんが相談にこなければ20万円も無駄に税金を払っていることになっていました。

ネットで簡単に調べた知識を使って「無料申告」するのも方法の一つではあります。
ですが、上記の相談例のように、ネットで簡単に調べたぐらいでは、気づかない内に損をしてしまう可能性があることも事実です。

目先の「無料」という言葉に捕らわれた結果、気が付かない内に大きな損をしている可能性も考えると、「無料申告」というのが如何に難しいことなのか分かると思います。

みなさんも、無料申告をされる際には、このような落とし穴もあることを意識して、申告するようにしてください。

それではみなさん、次回の記事までごきげんよう。

※上記の例は、あくまでもAさんの場合であって、Aさんと似たような境遇であっても適用できない場合もあります。
税務は常にケースバイケースですので、実際には税理士に相談してみないと分からないことがほとんどです。

当事務所を気になった方は以下のリンクからHPへアクセスできます。

参考文献:国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
3 住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法