みなさん、こんにちは。
3月は確定申告もあり、当事務所も1年で1番忙しい時期なります。
大変ではありますが、その分仕事が終わった後の達成感はとても大きいので、今年もお客様のために一生懸命頑張っていきます!
さて、確定申告をする際に良く耳にするのが「無料申告」という言葉になります。
ネット上でも確定申告を税理士に頼まず、個人で調べて申告をされる方もいると思います。
そこで、今回のテーマは「無料申告の落とし穴」を説明しようと思います。
以下の話は、実際にあった相談内容を元に、説明をできる限り分かりやすくしたものになります。
【相談事例】
ある個人事業主(Aさん)は昨年家を購入したので、その税金対策の相談に来ました。
A :昨年、5000万円で家を購入しまして、今は住宅ローン控除を申請しています。ただ、他に何か方法はないかと思って相談に来ました。
石:そうですか。それでは銀行からの借入金は5000万円でしょうか?
あとその家は自宅ですか?
A :借入金は5000万になります。
あと、家は自宅だけでなく仕事場としても兼ねています。
石:分かりました。その他に住宅購入の諸経費や住宅ローンの利息はいくらぐらいになりますか?
A :諸経費は150万円掛かりました。初年度の利息は60万円ですね。
石:なるほど・・・(沈黙)
A :あの・・・何かあるのでしょうか・・・
石:ええ、実際に試算してみないと分からないのですが、もしかしたら住宅ローン控除を適用する前に、もう一つの方法を行うと税金が安くなるかもしれません。
今回の場合「自宅と仕事場を兼ねている家」という部分がポイントになります。
では、実際に試算の方法を説明します。
【前提条件】
・5000万円の家の内訳は、土地が3000万円、建物が2000万円である
・Aさんの所得税が税率20%である
【方法1:住宅ローン控除のみを適用】
今回Aさんが相談に来る前に、申請していた制度になります。
この「住宅ローン控除」とは、家の購入金額もしくは銀行から借りた借入金の、どちらか安い方の金額に対して1%を控除してくれる制度になります。
今回の場合、家の購入金額は5000万で借入金も5000万円で同額になります。
また、「住宅ローン控除」には限度額が設定されており、現時点では一般住宅に当たる物件は、4000万円までが限度額となっています。
(詳細を知りたい人は、この記事の一番下に記載する参考文献のURLをクリック)
今回の場合、5000万円の家ですが、住宅ローン控除の限度額は4000万円のため、4000万円の1%である40万円分の税金が安くなる計算になりました。
【方法2:事業経費も適用する場合】
Aさんが建てた家は「自宅と仕事場を兼ねている」ことになります。今回の場合1/3を仕事場としていた場合を考えます。
Aさんの話では、住宅購入の諸経費が150万円掛かり、住宅ローンの利息は60万円掛かっていると言っていました。
2つの合計金額は210万円ですが、この家は1/3は仕事場を兼ねている家になります。その場合、210万円の1/3は「事業経費」として計上することができます。
(家の1/3は仕事場のため、家に掛かるお金の1/3は事業に掛かるお金と解釈できるため)
そのため、210の1/3である70万円は経費となります。
また、建物の減価償却費(建物の値段 ÷ 24ヵ月)として以下の金額も経費にすることができます。
減価償却費 = 2000万 ÷ 24 × 1/3(仕事場の割合)
= 27.7777・・・ = 約27万
つまり、合計で97万円が経費として計上することができます。
そのため、上記の経費の内、所得税と住民税(10%固定)と事業税(5%固定)の足した割合、
97万円 × 0.35(%) = 339,500円分の税金が安くなります。
さらに、5000万円の2/3は自宅なので「住宅ローン控除」を適用することができます。5000万円の2/3である3333万円を住宅ローン控除に適用すると、約33万円分の税金が安くなります。
最終的には、339,500円と33万円を足して、合計で669,500円分の税金が安くなる計算になりました。
A :え?20万円以上も税金を安くすることができるんですか!?
石:試算したら、そのような結果になりましたね・・・
A :直ぐに、住宅ローン控除を取り消して、必要な書類を持ってきます!
上記の相談例は、説明用に簡略化していますが、実際にあったことです。
もし、Aさんが相談にこなければ20万円も無駄に税金を払っていることになっていました。
ネットで簡単に調べた知識を使って「無料申告」するのも方法の一つではあります。
ですが、上記の相談例のように、ネットで簡単に調べたぐらいでは、気づかない内に損をしてしまう可能性があることも事実です。
目先の「無料」という言葉に捕らわれた結果、気が付かない内に大きな損をしている可能性も考えると、「無料申告」というのが如何に難しいことなのか分かると思います。
みなさんも、無料申告をされる際には、このような落とし穴もあることを意識して、申告するようにしてください。
それではみなさん、次回の記事までごきげんよう。
※上記の例は、あくまでもAさんの場合であって、Aさんと似たような境遇であっても適用できない場合もあります。
税務は常にケースバイケースですので、実際には税理士に相談してみないと分からないことがほとんどです。
当事務所を気になった方は以下のリンクからHPへアクセスできます。
参考文献:国税庁 No.1213 住宅を新築又は新築住宅を取得した場合(住宅借入金等特別控除)
3 住宅借入金等特別控除の控除期間及び控除額の計算方法